2026-06-29

第2回 「新たな地域医療構想」を先取りする 2026年度改定 新設「急性期病院一般入院基本料」が火をつける救急患者争奪戦

“背伸び”をしてきた“なんちゃって急性期病院”は淘汰に向かう可能性大

診療報酬が6月1日から改定されました。本体の改定率が30年ぶりに3%超えの3.09%(その大半は物価高や賃上げ対応に充てられましたが)となり、多くの医療機関はとりあえずひと息付いていることでしょう。

2026年度診療報酬改定は、第1回で取り上げた「新たな地域医療構想」を先取りする形で急性期病院などの入院基本料が大きく再編されました。この急性期病院の入院基本料の再編を機に、各地で救急患者や急性期患者の獲得競争が今まで以上に激化していきそうです。その大きな理由は、新設された「急性期病院一般入院基本料」です。

急性期病院一般入院基本料新設で地域の病院機能の役割分担の動きが加速

2026年度改定の最大のポイントは、2027年度からスタートする新たな地域医療構想を見据え、急性期を担う病院機能の明確化を推し進める内容となったことです。特に地域ごとの病院単位の急性期機能を確保するため、2区分の急性期病院一般入院基本料(急性期病院A:看護配置7対1、1日1,930点、同B:看護配置10対1、1日1,643点)が新設されたことで、地域の病院機能の役割分担の動きが加速することが予想されます。

2040年を見据えた「新たな地域医療構想」では、医療機関機能が「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類されます。このうち、「急性期拠点機能」を有する病院は「人口20万~30万人ごとに1拠点」が目安とされています。

新設される2区分の急性期病院一般入院基本料のうち、「急性期病院A一般入院料」はまさにそうした「急性期拠点機能」の病院を想定した点数です。また、入院料の加算である「急性期総合体制加算」と「地域医療体制確保加算2」、手術料の加算である「外科医療確保特別加算」も同趣旨の点数と言えます。

救急搬送件数と全身麻酔手術件数が報酬算定の要件に

「急性期病院A一般入院料」の主な要件は、「救急搬送件数:年2,000件以上」「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」などで、入院患者数の10%以上の数の常勤医師の配置が求められます。病院全体として急性期医療への特化が必要で、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟入院料とのケアミックスは認められません(経過措置あり)。

一方、「急性期病院B一般入院料」の主な要件は、第二次救急医療機関または認定救急病院で、以下の4要件のうちいずれかを満たす必要があります。

1.救急搬送件数:年間1,500件以上

2.救急搬送500件以上かつ全身麻酔手術500件以上

3.人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上

4.離島医療圏で最大の救急搬送件数

なお地域包括医療病棟とのケアミックスは認められず(経過措置あり)、地域包括ケア病棟入院料との併存は可能です。

従来からある急性期一般入院基本料1〜6は近い将来整理の方向

最大のポイントは、これまでの入院料のように病棟単位ではなく、医療機関の機能に着目した病院単位での入院料となっていることです。さらに、病院内で多様な機能の病棟を併存させるケアミックスにも、経過措置はあるものの制限がかけられています。

ちなみに、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要」資料の中の「急性期における評価の見直し」の項には、「地域で病院が果たしている救急搬送の受入や手術等の急性期機能に着目し、地域ごとの急性期の病院機能を確保する観点から、病院の機能に着目した急性期病院一般入院基本料を新設」と記されており、この文面からも「新たな地域医療構想」の医療機関機能を想定した点数であることがわかります。

この6月から、急性期病院は実績などに応じて「急性期病院一般入院基本料」または従来の「急性期一般入院基本料」を選択しています。ただ、新たな地域医療構想を推し進めていく上で、病院単位での入院料の普及・定着が必要なことから、次期改定以降に急性期一般入院基本料1〜6は整理が進むという見方が専らです。つまり、今後、急性期病院として生き残っていくためには、「急性期病院A一般入院料」か「急性期病院B一般入院料」の選択は必須なのです。

「急性期病院B一般入院料」は「高齢者救急・地域急性期機能」のイメージ

「急性期病院A一般入院料」は、高度な救急・手術実績を持つ病院向けで、主に都市部における急性期拠点機能を想定していると考えられます。一方、「急性期病院B一般入院料」は、主に人口減少地域などで急性期医療を担う病院を対象としていると考えられます。「新たな地域医療構想」における「高齢者救急・地域急性期機能」に近いイメージと言えるでしょう。

なお、「急性期病院B一般入院料」の基本点数は1,643点(看護10対1)と低めですが、新設の看護・多職種協働加算(255点)を取ることで収益性が向上し、従来の「急性期一般入院料1」(1,874点、看護7対1)を上回って1,898点となる設計になっています。

「急性期病院A」は都市部で「急性期拠点機能」を担う病院が、
「急性期病院B」は中小含め都市部で「高齢者救急・地域急性期機能」等に対応する病院が

「急性期病院一般入院基本料」の要件からも明らかなように、救急搬送件数が取得のカギとなります。「急性期病院A」「急性期病院B」いずれも多数の救急患者が必要となり、病床過剰地域では病院間で救急患者の争奪戦が繰り広げられることになります。

とくに競争が厳しくなりそうなのが、人口20万人以下の医療圏です。「急性期病院B 一般入院料」の要件の中には「人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上」があり、この場合、搬送件数最大の1病院のみが対象となるからです。圏域内に同等の病院が2病院以上あり、どこも救急搬送件数が1,000件に達していなければ、争奪戦は避けられません。なお、救急患者数は入院料の施設基準の肝でもある重症度、医療・看護必要度の指数算出のために新たに設けられた「救急患者応需係数」(1床当たり年間救急件数×0.005)にも影響します。そうしたことも競争に拍車をかけるでしょう。

最近の医療メディアの報道を見ていると、「急性期病院A」は都市部で概ね250床以上の中規模・大規模病院で、救急や手術に積極的な「急性期拠点機能」を担う病院が選択することになるようです。一方、「急性期病院B」は200床に満たない病院も含め、都市部で「高齢者救急・地域急性期機能」に対応したり、地方で「急性期拠点機能」を展開したりする病院が選択することになるようです。

「急性期病院一般入院基本料」の新設と、従来からの「急性期一般入院料」の整理によって、これまで“背伸び”をしてきた“なんちゃって急性期病院”は淘汰に向かう可能性が大きいと考えられます。

千田 敏之
せんだとしゆき
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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