

第3回 病院病床、大削減時代に突入
予算規模昨年の7.5倍の「病床数適正化緊急支援事業」今年も始まる
昨年に続いて、病床を削減する医療機関を経営的に支援する「病床数適正化緊急支援事業」が今年も行われます。厚生労働省医政局地域医療計画課は6月22日付の事務連絡で、初回の都道府県への申請期限を7月14日とすることを周知しました。昨年同様、2回目以降の申請も行われる予定です。申請予定の医療機関はすでに準備・申請済みかと思われますが、該当医療機関(2025年12月16日~2027年3月31日に病床削減を行う医療機関、事業計画書を提出し2024年12月17日~2025年9月30日に病床削減を行った医療機関等)は、申請忘れをしないようにしたいものです。
削減した病床1床につき410万4,000円交付
昨年の「病床数適正化支援事業」(旧名称)は、地域医療構想が進む中、病床をただ減らすのではなく、経営が厳しい医療機関を支えつつ、実際の医療需要に合わせて病床を調整したいという国の意向が反映された事業です。2024年12月17日の令和6年度補正予算成立後、同日から期日内(2024年度中が原則)までの病床削減を対象とする支援として「医療施設等経営強化緊急支援事業」の1つである「病床数適正化支援事業」がスタートしました。一般病床・療養病床・精神病床の削減に対して、削減病床1床につき410万4,000円交付されるという仕組みです。
昨年の「病床数適正化支援事業」の第1次内示は2025年4月11日に内示されましたが、配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床でした。厚労省は当初、計7,000床程度の削減を見込んでいましたが、想定の7.7倍、全国で計5万4,000床に上りました。申請数は約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床でした。
2025年6月27日に公表された第2次内示では配分額約168億円、対象病床数は4,108床でした。「一般会計の繰入等がない医療機関」という条件を付けて第1次内示で公立病院を対象外としたことに批判が集まったため、第2次内示では公立病院も対象となりました。昨年実施された令和6年度補正予算による「病床数適正化支援事業」 は最終的に、4月の第1次内示と合わせて削減病床は計1万1,278床、総額462億8,491万円に上りました。
今年から「病床数適正化緊急支援事業」に名称変更、スキームも改変
昨年の名称は「病床数適正化支援事業」でしたが、今年(令和7年度補正予算)は「病床数適正化緊急支援事業」へと変わっています。「緊急」という言葉が付いた理由は、医療需要の変化に迅速に対応し、病床削減を「緊急」に促進する必要があると政府が判断したためです。厚労省のホームページには事業の概要として、「効率的な医療提供体制の確保を図るため、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進める医療機関に対し、診療体制の変更等による職員の雇用等の様々な課題に際して生じる負担について支援を行うことを目的とする」と書かれています。支援金額は変わらず、病院(一般・療養・精神)・有床診について削減する病床1床あたり410万4000円(ただし休床病床を削減する場合は半額の205万2000円)の補助が行われます。
今年度の対象医療機関は以下の通りです。
① 2025年12月16日から2027年3月31日までの間に、病床数(一般病床、療養病床及び精神病床の病床数をいい、医療法第30条の4第10項から12項までの規定及び国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)に基づき許可を受けた病床を含む。)の削減を行う医療機関
②「病床数適正化支援事業に係る事業計画(活用意向調査)の提出について」2025年2月21日付厚生労働省医政局地域医療計画課事務連絡)により、事業計画書の提出をもって削減の意向を示しつつ、2024年12月17日から2025年9月30日までに病床の削減を行い、都道府県に対して病床数の変更に関する届出を行った医療機関
③「地域医療構想の取組の推進に向けた調査について」(2025年8月14日付厚生労働省医政局地域医療計画課事務連絡)において、病床を削減予定と報告を行い、現に病床を削減した医療機関
支援のスキームも変更されました。「病床数適正化支援事業」は厚生労働省の「医療施設等経営強化緊急支援事業」の一事業で、都道府県が給付金を支給し、国がその財源を補助する仕組みでした。それが、2025年に成立した改正医療法で「医療機関が経営の安定を図るために緊急に病床数を削減することを支援する事業」を都道府県が実施できる規定が新たに設けられたことで、今年度(令和7年度補正予算の繰越事業)からは、国が基金を作り、都道府県が事業主体となって行う新たな事業に変更されたのです。制度の法的位置付けがより強化されたと言えるでしょう。
「病床数適正化緊急支援事業」の予算は3,490億円と昨年の7.5倍
昨年の令和6年度補正予算による「病床数適正化支援事業」の実績は総額約463億円でしたが、令和7年度補正予算の「病床数適正化緊急支援事業」は3,490億円と昨年の7.5倍となっています。その背景には、自民・公明・維新の3党合意があります。
自民・公明・維新の3党は2025年5月、社会保障改革に関する合意文書で、2027年4月の「新たな地域医療構想」スタートまでに全国の医療機関の余剰病床約11万床(一般・療養5万6,000床、精神5万3,000床)を削減する方針をまとめており、それを達成するための予算措置と言えます。1床削減で410万円(休床の場合は205万円)ですから、単純計算で8万5,000床分が用意されたことになります。
こうした予算規模を見ても、国の医療政策が病院病床の大削減に舵を切ったことがわかります。病院経営者は、「新たな地域医療構想」を先取りしたと言われる2026年度診療報酬改定の内容を吟味・研究し、2040年に向けての自分の病院の病床数の適正規模や果たすべき役割を、真剣に考える時が来たと言えるでしょう。

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。