2026-07-27

第4回 これからの地域医療の要、高齢者救急

中小病院が生き残る道は地域包括医療病棟か地域包括ケア病棟

「新たな地域医療構想」を先取りする形で急性期医療を担う病院機能の明確化を推し進めるため、2026年度診療報酬改定では急性期病院の入院基本料が大きく再編されたことについては前々回の第2回で書きました。その関連で今回は、今改定のもう一つの大きなポイントである高齢者救急関連の診療報酬について、地域包括医療病棟を中心に解説します。

救急搬送のうち75歳以上が約50%

救急搬送のうち高齢者の割合が年々増加し、特に75歳以上の患者が救急搬送件数の過半を占める状況となっていることが大きな問題となっています。医療依存度がそれほど高くない高齢患者が高度急性期病院に集中すると、一刻を争うような難易度が高い治療が必要な患者の治療に影響が出て、地域の急性期医療や救急医療の体制が逼迫してしまうからです。

ちなみに、総務省消防庁が2026年1月に発表した「令和7年版救急・救助の現況」によると、2024年の全国の救急自動車による搬送人員数は676万9172人で、うち65歳以上は428万4953人(63.3%、対前年比4.7%増)、75歳以上は336万5377人(49.7%、対前年比6.4%増)でした。

高齢者への対応力を備えた病棟で包括的に対応せよ

こうした高齢者の救急患者の急増、それに伴う急性期病院の機能不全といった構造的な問題を背景に、「高齢の救急搬送患者をどのような病棟で受け入れるのが適切か」についての本格的な議論が行われたのは、2024年度診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)でした。中医協の議論では、軽症〜中等症の高齢救急患者は、必ずしもICUや高度急性期の病棟ではなく、より高齢者への対応力を備えた病棟で包括的に対応し、在宅復帰につなげることが合理的だという結論に至りました。

その結果、2024年度改定では、高齢者救急患者に包括的に対応する10対1看護の地域包括医療病棟が制度化、地域包括医療入院料(1日3,050点)が新設されました。従来からあった13対1看護の地域包括ケア病棟に加えて、看護配置やリハビリテーションをより手厚くして急性期対応力を高めた地域包括医療病棟が、高齢の救急患者を受け入れてリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰支援を提供して「包括期入院医療」を担う病棟として新たに位置付けられることになったのです。

また、高次救急病院から状態が安定した高齢者を地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟などへ転院搬送 (いわゆる「下り搬送」)することで、地域の医療機関と連携して高齢者を受け持つ仕組みの必要性も高まっていたことから、同改定では、高次救急病院と地域医療機関との平時からの連携に加え、「下り搬送」を評価する「救急患者連携搬送料」(600~1,800点)も新設されました。

地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の診療報酬大幅に見直し

続く、今年の2026年度改定では、基幹病院と高齢者の救急患者を受け入れる地域の病院との役割分担を一層進展させる内容となりました。地域ごとの病院単位の急性期機能を確保するため、2区分の急性期病院一般入院基本料が新設されたことは第2回で書きましたが、高齢者救急に対応する病棟である、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟の診療報酬が大幅に見直されたことも大きなポイントです。

2040年を見据えた「新たな地域医療構想」では、医療機関機能が「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類されます。このうち「高齢者救急・地域急性期機能」を担う病院の評価も行われたわけです。

地域包括医療病棟は細分化、急性期病棟がない病院を評価

特に大きな改革が行われたのは地域包括医療病棟です。2024年度改定で新設された「地域包括医療病棟入院料」は主に高齢者救急の受け入れを促進するために創設されましたが、看護必要度や報酬部分で適切な評価がなされていないとの指摘に応えた形です。

具体的には、地域包括医療病棟は高齢者の中等症までの救急疾患等の幅広い受け入れを推進する観点から、高齢者の生理学的特徴や頻度の高い疾患を踏まえ、平均在院日数、ADL低下割合及び重症度、医療・看護必要度の基準が大きく見直されました。また、急性期病棟の併設状況や医療資源投入量に応じた評価が導入されました。さらに、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的な取り組みを推進する観点から、加算の体系も見直されました(表1)。

着目したいのは「地域包括医療病棟入院料」の区分けです。具体的には、まず急性期病棟の併設の有無で入院料が1と2に分けられました。1は急性期病棟がない病院を対象として、救急患者などの受け入れ負荷を考慮した評価が設定されました(最大3,367点)。2は急性期病棟がある病院になります(最大3316点)。さらに1と2の入院料を手術や緊急入院の有無に応じて3つに細分化しました(表2)。

大きなポイントは、急性期病棟を持っていなかったり、手術をしないけれども緊急入院を受け入れる病院の報酬が高く設定された点です。国は、「急性期拠点機能」の集約化を進めています。中途半端に手術に取り組むより、近隣の拠点病院に手術等の急性期機能を任せ、高齢者の緊急入院への対応に力を入れる病院を高く評価する姿勢が明確に表れた報酬と言えます。

地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟に「包括期充実体制加算」新設

一方、「地域包括ケア病棟入院料」における高齢者救急関連項目では、自宅や介護施設等で容態が悪化した患者の受け入れを評価する「在宅患者支援病床初期加算」の対象が緊急入院の患者まで拡大されました。これまで、介護老人保健施設から入院した患者の場合、「救急搬送された患者または救急患者連携搬送料 を算定し他の保険医療機関から搬送された患者」が580点だったものが、「緊急入院の場合」590点に改められました。

また、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟については、新たな加算として、在宅医療・介護保険施設 の後方支援等に一定の体制と実績がある医療機関を評価する「包括期充実体制加算」(80点、14日まで) が新設されました。地域包括医療病棟または地域包括ケア病棟を持つ、主に許可病床数200床未満が対象で、急性期病棟を有する医療機関は算定できません(表1)。

「救急患者連携搬送料」も見直し受け入れ側も評価

なお、2026年度改定では、高次救急病院から状態が安定した高齢者を地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟などへ転院搬送を評価する「救急患者連携搬送料」も大きく見直され、3次救急などが⼊院前の救急患者を下り搬送した場合の評価を引き上げるとともに、新たに搬送の受け⼊れ側も評価されることになりました。

具体的には、搬送元の「救急患者連携搬送料1」と、 受け⼊れ側の「救急患者連携搬送料2」に再編されました。 搬送元の「救急患者連携搬送料1」は、院内の医師・看護師・救急救命⼠が搬送に同乗する場合(2400点〜600点)とその他の場合(1000点〜200点)が設定され、それぞれ4段階の評価になります。一方、受け⼊れ側の点数である「救急患者連携搬送料2」は、⾃院の医師・看護師・救急救命⼠が同乗する場合の800点と、その他の200点の2段階になります。

目指したい地域包括医療病棟

高齢患者の急増に伴い、高齢者救急は、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟などが主体となって対応していくという国の方針が明確になっています。地域で「急性期拠点機能」を担う病院は集約化の方向であることから、中小規模の病院が存続していくには、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟に特化した病院に生まれ変わっていくしか生き残る道はないとも言えます。

中でも地域包括医療病棟は、地域包括ケア病棟よりも施設基準は厳しく医療機能を充実させる必要がありますが、その報酬設定は高いため、中小病院は可能な限り目指したいところです。

千田 敏之
せんだとしゆき
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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