2026-08-10

第5回 地域医療連携推進法人のススメ(前編)

機能分担、集約化、連携強化を図り難局を乗り切るためのツールとして脚光

2026年度診療報酬改定と、7月に公表された地域医療構想策定ガイドラインなどを契機として、地域における医療機関の役割分担、棲み分けが今後ますます活発化していきそうです。そんな中、診療報酬による経済的なインセンティブや、政策による誘導とは一線を画し、自発的に役割分担や医療連携に取り組もうとする動きも広がっています。そうした動きの1つが地域医療連携推進法人(以下、連携推進法人)です。

これまで63法人が認定、最多は大阪府で9法人、次いで北海道が5法人

連携推進法人とは、地域での医療機能の分担や連携を進める目的で、母体の異なる複数の医療機関や介護事業者などが参加して共同でさまざまな連携業務を行う事業体です。「競争よりも協調」を重視し、「地域医療構想達成のための一つの選択肢」として2015年の医療法改正で制度化が決まり、2017年4月から認定がスタートしました。

法人の種類は一般社団法人で、法制度上のメリットは、病床過剰地域においても、地域医療構想の達成のために必要な病床融通を参加法人間で行うことができることや、一定の要件(連携推進法人が議決権の全てを保有等)の下、介護サービス等を行う事業者に対し出資できること、参加法人に対して資金の貸付が可能(参加法人等に個人立が参加できる場合は不可)な点などです。また、様々な連携推進業務を通じて共同購入や人材交流ができること、参加法人間で経営状況や経営方針などについてざっくばらんに話し合えることなども大きなメリットと言えます。


制度スタートから約9年が経過し、2026年4月1日現在、全国でこれまでに30道府県に63法人が連携推進法人として認定されています。注目されるのは一昨年の2024年度から認定数が急増している点です。2023年度はわずか3法人の認定でしたが、2024年度は13法人、2025年度は8法人が認定されました。都道府県別に見ると、一番多いのは大阪府で9法人、次いで北海道が5法人、静岡県と秋田県が4法人、滋賀県、高知県が3法人となっています。
詳細なリストは厚生労働省のWebサイトを参照下さい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177753.html

人口減少、医療人材不足、コロナ禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃

連携推進法人が急増している理由・背景は制度が創設された11年前の医療法改正時よりも、医療機関を取り巻く経営環境が厳しさを増したことが挙げられます。

人口減少、医療人材不足、新型コロナウイルス感染症禍後の患者数減少に加え、物価高、円安、人件費高騰などが医療機関を直撃しています。そんな中、地域の医療機関の多くが、単独ではなく、地域の複数の医療機関、介護施設、介護事業所などとともに、機能の分担、集約化、連携強化を図り、この難局を乗り切ろうと考えるようになり、そのためのツールとして、連携推進法人制度に今まで以上に注目が集まっているのです。

日本の医療を牽引してきたリーダーの医療機関が相次いで連携推進法人設立

連携推進法人の典型例は、地域で高度急性期機能を担う大病院が主導して地域内で患者をシームレスに引き継ぐ仕組みの構築を図る「垂直連携型」のケースです。その他、医療機能が同等、あるいは似通った医療機関同士による「水平連携型」のケース、大学病院が取り組むケースなど様々なパターンが登場しています。

最近注目されるのは、日本の医療を牽引してきたリーダーが経営する医療機関が中心となって連携推進法人を設立するケースが出てきたことです。

一つは、日本病院会会長を務める相澤 孝夫氏が理事長を務める社会医療法人財団慈泉会・相澤病院(長野県松本市、456床)が中心となって、地域の民間病院、診療所、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなど6法人を参加法人として2025年10月に設立された「信州松本ヘルスケアネットワーク」です。同連携推進法人は、相澤病院が中心となって参加医療機関とともに、経営コストの削減、医療人材の交流・有効活用に取り組んでいくとしています。

また、今年4月には、元日本医師会長の横倉 義武氏が理事長を務める、社会医療法人弘恵会・ヨコクラ病院(福岡県みやま市、199床)も、地域の医療法人、診療所、社会福祉法人など4法人、1個人で連携推進法人「FUKUOKA有明ヘルスケアネット」を設立しました。同連携推進法人は、医療介護福祉の連携推進や、地域包括ケアシステムの実現を目指すとしています。

地方の民間医療機関が共倒れせず、生き残っていくための最終手段

地域で“強い”急性期病院が1つだけが生き残っても、慢性期・回復期に入った患者を受け入れる後方病院や介護事業所が地域になければ経営は行き詰まります。地方の民間医療機関が共倒れせず、生き残っていくための最終手段として、医療界のリーダーたちも連携推進法人を活用しようと考えたということは、注目に値するでしょう。

2015年に連携推進法人の制度化が決まった当時は、一部の県では連携推進法人の設立に県医師会が猛反対し、設立計画が潰されることもありました。制度誕生の元々の発端が、安倍晋三政権時代の2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」に記された「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」だったため、大規模法人が中小を吸収合併していくイメージが先行し、中小病院や診療所の経営者などに警戒感が芽生えたことなどがその背景にはありました。

しかし、日本病院会会長や、元日本医師会会長までもが取り組むようになったことで、時代は大きく変わったと言えます。次回は、連携推進法人制度の活用事例をいくつか紹介します。(この項続く)

千田 敏之
せんだとしゆき
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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