2026-07-13

第2回 その掲示物、患者さんに届いていますか? 貼り方を変えるだけで、「読まれる壁」になる

掲示板は無くせない。だからこそ「見せ方」が問われる

院内の掲示板は、悩ましい存在です。
なぜなら掲示しなければならない物が意外と多いからです。

医療法で定められている、「医師氏名」「管理者氏名」「診療日と診療時間」の掲示や、保険診療における「保険外負担」「明細書の発行体制」「施設基準」「算定している加算」(2024年から院内掲示に加えてホームページへの掲載も必要に)、さらに「季節の予防接種の案内」や「院内マスク着用のお願い」まで…。その全てをデジタル化して紙の掲示物を無くすのは難しいのが現状です。だからこそ、ただ「貼れば良い」のではなく、「見てもらえる貼り方」を心がけたいものです。

増えすぎた掲示物、実は見てもらえていません

クリニックや病院で、「残念な掲示板」をよく見かけます。
残念な掲示板とは、見てもらえない掲示板のこと。
雑然と貼られ、統一感がなく、枠からはみ出している——。

人間の脳は、揃っていないもの・整理されていないものを目にすると、処理にストレスを感じます。中身を読む前に「読みづらいな」と感じ、最初から読む気を無くしてしまうのです。

雑然とした掲示板は、見てもらえない。逆に言えば、整った掲示板は「読んでみよう」と思わせる力を持っています。

今日からできる、整った掲示板のつくり方

難しい工事無しに、素敵な掲示板にしていく方法があります。

ポイントは、①掲示面の統一、②文字の工夫、③言葉の工夫 の3つです。
①掲示面の統一・・・・・・まず用紙サイズを統一してみましょう。バラバラではなく一つのサイズにまとめることです。例えばA4サイズはコピー機やプリンターで扱えて便利です。
紙質も大事です。破れにくい厚み、色も白の一択でなく、ベージュや淡いグリーンなど、文字が読みやすければインテリアに合う色も良いでしょう。
破れ防止にはパウチすると長持ちします。少し光って反射するのが難点ですが、丈夫さは魅力です。
用紙を留める四隅のマグネットピンは形と色を統一しましょう。掲示物を邪魔しない透明タイプがお勧めです。

②文字の工夫・・・・・・書体はゴシック体がお勧めです。なかでもUD(ユニバーサルデザイン)フォントは、文字の形・太さ・間隔が読みやすく調整され、医療・教育の現場で推奨されています。
老眼や弱視の方にも読みやすく最適です。一般的なパソコンに最初からある書体(BIZ UDゴシックやBIZ UDPゴシック)で大丈夫です。

③言葉の工夫・・・・・・医療施設はどうしても「禁止」の表現が増えますが、同じお願いでも言い方を工夫するだけで、不安な患者さんやご家族の気持ちはやわらぎます。
例)×「写真撮影禁止」→ 「他の患者さんのプライバシー保護のため、院内での撮影はご遠慮ください」。ひと言、理由を添えるだけで、納得して受け取ってもらえます。


さらに予算が取れるなら、計算された掲示板をオーダーしてみる

掲示板のサイズをなんとなく決めていませんか?
用紙をA4に統一すると決めたら、例えば「縦に2段、横に4列」のように「A4を何枚並べるか」で寸法を決めると、余ったりはみ出したりせず、壁全体が整った一面になります。

大切なのは、掲示物どうしの「間隔」です。ぴったり詰めず、隣との間を3cmほどあけると、読みやすくなります。

視覚心理学では、人は近いものを一つのまとまり、離れたものを別物として無意識に認識します。
(近接の法則)
詰めすぎると、脳はどこまでが一枚か判別しづらく、負担を感じます。

掲示板にドット(点)を入れると水平・垂直が取りやすく、誰が貼ってもきれいに仕上がります。

オーダー品ならロゴマークも入れられます。オリジナリティが出て、掲示物が無い時でも空間に違和感のない掲示板が生まれます。

整った掲示板は、患者さんとスタッフ、両方を助ける

掲示板を整えると、二方向に変化が現れます。

一つは患者さんです。整理された壁は気持ちよく読んでもらえ、伝えたい情報がきちんと届きます。そして「この施設は細部まで行き届いている」という信頼感が生まれます。

もう一つはスタッフです。どこに何の案内があるか一目でわかる掲示板は、スタッフの気持ちも整えます。きちんと掲示する習慣は、必要な物・不要な物を見分ける視点を養います。美しい掲示板は、環境だけでなく心も整える——その積み重ねが、施設への信頼を育てていくのです。

戸倉蓉子
とくらようこ
株式会社ドムスデザイン 代表取締役社長
一級建築士・イタリア政府認定デザイナー・元看護師

ナイチンゲールに憧れ「将来の夢は看護師さん」と小学校の卒業文集に書く。慶應義塾大学病院の看護師として勤務するなかで環境デザインの力を確信し、建築士に転身。二級建築士を取得後、35歳でイタリア・ミラノの建築大学に留学、世界的巨匠パオロ・ナーバ氏に師事。イタリア政府認定デザイナーを取得し帰国後、一級建築士取得。株式会社ドムスデザイン設立。「リゾートしながら人間ドック」をコンセプトにデザインした黒沢病院附属ヘルスパーククリニックをはじめ、100を超える病院・クリニック・高齢者施設の設計・改修を手がける。来院患者数3倍、自由診療売上増など、経営に直結する成果を生み出し続けている。

【著書】 『医療の場を整える環境デザイン』 日本看護協会出版会 他

株式会社ドムスデザイン

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