2026-09-14

第4回 待つ時間が信頼をつくる その待合室、大丈夫ですか?

待合室の印象は診察室での信頼関係を左右する

前回は、施設の第一印象を決める「入口」についてお話ししました。
今回は、その入口を抜けた先、患者さんが最も長い時間を過ごす場所・・・・・・「待合室」を考えてみたいと思います。
受付を済ませ、診察室に呼ばれるまでの時間は、患者さんにとって「何もできない」ただじっと待つだけの時間です。
緊張や不安、時には痛みを抱えながら、ひたすら待つ。この時間の過ごし方ひとつで、医療施設への信頼は大きく変わります。

入口で好印象を持たれても、待合室が居心地悪ければ、その印象は簡単に崩れてしまいます。
逆に、待合室が心地よければ、多少混み合っていても患者さんは許容してくれるものです。

患者さんが少しでも心地よく過ごせる待合室のポイントについてお話しします。

待合室で大切なポイント

患者さんの気持ちになって、待合室の椅子に腰かけてみたことがありますか?
すると色々な物が見えてくると思います。日常の業務では、医療従事者の視点と患者さんの視点は正反対なのです。
患者さんが見ているものは、スタッフの動き、患者さんに対する言葉づかい、スタッフ同士の会話
(思いのほか聞こえています)、そしていつ呼ばれるか気になる診察室のドア・・・・・・。
是非、患者さんの目線になって以下のポイントを意識してチェックしてみてください。

チェック結果からわかること


さて、10項目のチェック結果はいかがでしたか? YESはいくつありましたか? 
ここに挙げたのは、患者さんが安心して過ごせる待合室をつくるための、どれも基本的なことです。
すべての項目をYESにするために、どうしたらよいでしょう。

今日からできる、居心地の良い待合室のつくり方

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでも順番が大切です。
➀清潔な掃除 ②椅子の配置と動線の見直し ③おもてなしのインテリア
この順に整えていきます。

すぐにできることから始めましょう。
汚れた椅子やソファは拭き上げ、破れやシミがあれば張り替える。雑誌は最新号に入れ替え、古いものは処分する。ゴミ箱はこまめに空にする。小さなことですが、それだけで待合室の印象はぐっと変わります。

さらに、椅子の配置を見直すことも効果的です。正面から向き合う配置は、患者さん同士の視線がぶつかり、居心地の悪さを生みます。少し角度をつけたり、パーテーションや観葉植物でゆるやかに視線をさえぎったりするだけで、格段に落ち着いた空間になります。
私が心がけているのは、「一人でも、付き添いの人とでも心地よくいられる」選べる椅子の配置です。
待合室に季節の花や絵画をひとつ飾るだけで、「緊張感が和らいでほっとする」という声をいただきます。大切なのは、「待ち時間を少しでも快適にお過ごしください」というメッセージを込めることです。

待合室の居心地が、施設全体の信頼をつくる

待合室で受けた印象は、その後の診察や会計、そして次回の来院意欲にまで影響します。
居心地がよければ、多少の待ち時間もクレームにならずに待っていただけるのですが、待ち時間をイライラして過ごした患者さんは診察室に行ってもその状態が抜けません。結果診療にも大きく影響を及ぼしてしまいます。
待合室は、それほど大きな力を持っているのです。そして最後に、どんなインテリアにも勝るものがあります。スタッフのお声がけです。しばらくお待ちの患者さんに「あと〇分くらいです」という待ち時間の目途を的確にお知らせ出来れば、気遣いや配慮があると感じられその医療施設全体の印象を良くしてくれることでしょう。最近は携帯電話でお知らせしたり、院内のどこにいても良い様なお知らせシステムの導入など様々な方法で待ち時間を自由に過ごせる傾向も広がっています。ハードとソフト、その両面から患者さんの待ち時間の質を考えるのは大切な事です。


おもてなしの待合室事例

患者さんの視線がぶつからないように椅子の配置を工夫した待合室
(黒沢病院附属ヘルスパーククリニック)
邪魔になる柱を樹木に仕立てキッズコーナーに居る子供を見守るママの居場所に変身させた待合室(0歳からの頭のかたちクリニック表参道神宮前)
ゆったりした椅子をあえて2色使いでリズム感を出し、壁面には
アートでリラックスできるよう配慮した待合室(神戸大山病院)
戸倉蓉子
とくらようこ
株式会社ドムスデザイン 代表取締役社長
一級建築士・イタリア政府認定デザイナー・元看護師

ナイチンゲールに憧れ「将来の夢は看護師さん」と小学校の卒業文集に書く。慶應義塾大学病院の看護師として勤務するなかで環境デザインの力を確信し、建築士に転身。二級建築士を取得後、35歳でイタリア・ミラノの建築大学に留学、世界的巨匠パオロ・ナーバ氏に師事。イタリア政府認定デザイナーを取得し帰国後、一級建築士取得。株式会社ドムスデザイン設立。「リゾートしながら人間ドック」をコンセプトにデザインした黒沢病院附属ヘルスパーククリニックをはじめ、100を超える病院・クリニック・高齢者施設の設計・改修を手がける。来院患者数3倍、自由診療売上増など、経営に直結する成果を生み出し続けている。

【著書】 『医療の場を整える環境デザイン』 日本看護協会出版会 他

株式会社ドムスデザイン

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