2026-09-14

第7回 「地域医療構想策定ガイドライン」を読み解く(前編)

人口減少と高齢患者急増に対応するため「再編・集約化」の取り組みに最重点

7月3日、厚生労働省がようやく「地域医療構想策定ガイドライン」を公表しました。今年春にも公表される予定でしたが、延びに延びて7月になってしまいました。

2025年12月に成立した改正医療法で定められた「新たな地域医療構想」を各都道府県でどう策定するかについては、2026年3月まで開かれた地域医療構想及び医療計画等に関する検討会で議論が続けられてきました。公表された「地域医療構想策定ガイドライン」は、この検討会の「とりまとめ」を基に、基本的な考え方や具体的な策定の手順を厚労省が整理したものです。

このガイドラインを基に、各都道府県は2027年度上半期頃までに、地域医療構想調整会議において課題の整理や構想区域の点検・見直しなどを行います。そして2028年度までに、各都道府県において急性期拠点機能を担う医療機関の具体的な医療機関名の決定も含めて「地域医療構想」を策定し、「2040年を見据えた医療提供体制について、2035年度を目途に、一定の成果を確保する」としています。

つまり、2029年3月までに新たな地域医療構想を策定し、地域の医療機関の役割分担、棲み分けの方向性を決定、2035年度までに構想を一定程度進め、2040年頃に必要とされる医療提供体制にできるだけ近づけておく、というスケジュールになります。

人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の非常に強い危機感

新たな地域医療構想については、本連載(PIVOT医療経営)の「第1回 いよいよスタートする『新たな地域医療構想』 知っておきたい7つのポイントとは」で、注目点を概説しました。今回公表されたガイドラインには、基本的な考え方や具体的な策定の手順がまとめられているわけですが、その「考え方」には、人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の強い危機感が表れています。新たな地域医療構想に対する国の強い意気込みを感じることができますので、概要を紹介しておきましょう。

ガイドラインは冒頭の「I.地域医療構想の考え方」の「1.2040年に向けた医療提供体制について」中で、「背景」について次のように記述しています。

我が国においては、今後、人口構造や疾病構造の変化に伴い、医療の需要が量的、質的に大きく変化することが見込まれている。特に、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、2040年に向けて、高齢者人口の増加に伴い、高齢者救急や在宅医療の需要が増加する一方、急性期医療の需要が多くの地域で減少することが見込まれる。

また、生産年齢人口の減少に伴い、医療機関における医師や看護職員等の担い手の確保がますます困難となることが想定される。

このため、地域において必要な医療提供体制を将来にわたり確保していく観点から、2040年頃の医療需要を見据えつつ、医療機関の役割分担や連携のあり方を整理し、地域全体として適切な医療提供体制を構築することを目的として、地域医療構想を推進する必要がある。

各地で人口減少が急激に進む中、地域の急性期拠点機能を集約化などによって維持するとともに、急性期拠点機能から“落ちこぼれていく”医療機関を生き長らえさせ、需要が急増する高齢者救急や在宅医療に対応できる医療機関に再編していくことが、地域医療構想の主眼であることが以上の記述からもわかります。

急性期医療については広域での集約化を求める

そのため、ガイドラインの複数の項目において、「再編・集約化」を強く意識した記述があるのが大きな特徴です。

「I.地域医療構想の考え方」の「3.医療機関機能の確保について」の中では、「医療機関の連携・再編・集約化」について、「大都市型の地域においては、医療需要の総量としては大きく減少はしないが、手術等の集学的な医療は相対的に減少し、高齢者救急等の包括期の医療需要や慢性期の需要が相対的に増加していく」ため「それぞれの地域ごとに当該状況に応じた医療機関の連携・再編・集約化の取組が求められる」としています。

加えて、「急性期医療については、構想区域ごとに、緊急性の高い疾患や頻度の高い疾患等に対応できる体制の確保が必要となる。がん手術やその他の高度な外科手術については、症例数が多い医療機関ほど、医療の質が高いことが一般的に知られており、こうした高度な手術等については、地域の医療資源に応じて、構想区域よりも広域な単位で集約して実施することを検討する必要がある」と、広域での機能の集約化の検討も要請しています。

また、「救急車の受入や手術の実施を行う医療機関の集約化や役割分担、夜間に緊急手術を行う医療機関の集約化等も取組として検討が必要である」と急性期拠点機能や急性期病床の集約化以外の連携・再編・集約化の必要性についても言及しています。

市町村には自治体病院にダウンサイジング、再編・集約化求める

さらに、「I.地域医療構想の考え方」の「2.地域医療構想について」の中の「関係者に期待される役割等」でも再編・集約化の必要性を強調しています。

関係者の中で、とくに市町村等に求められる役割について、「病院開設者としては、人口の少ない地域における自治体立病院は、当該地域での唯一の基幹的な医療機関として地域を支えている医療機関でもある一方で、都市部においては、他の医療機関と機能が競合している医療機関もあるなど、地域における役割は様々」とした上で、「自治体立病院の開設者としての観点だけではなく、他の医療機関と同様に、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」と、自治体病院の経営を優先させるのではなく、周辺医療機関との棲み分けの中でダウンサイジング、再編・集約化に取り組むよう要請しています。

同様に公立・公的病院等に対しても、「県立病院や公的病院等、その設置主体である都道府県、日本赤十字社、済生会、厚生連、国立病院機構、労働者健康安全機構等においても、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」とダウンサイジング、再編・集約化の検討を迫っています。

こうした流れを受けて、公立病院を管轄する総務省の公立病院改革は、経営改善というよりも、ダウンサイジング、再編・集約化に軸足を移していくでしょう。その結果、人口減少地域では閉院する医療機関もこれまで以上に増えていくと予想されます。

新たに創設される「医療機関機能報告」制度は新たな地域医療構想の最大の“肝”と言えますが、「とりまとめ」までの議論では言われていなかった新たなルールも盛り込まれました。次回はその新ルールについて解説します。

千田 敏之
せんだとしゆき
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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