

第5回 患者さんに優しい受付カウンターのつくり方
カウンターは単なる受付の場ではない
受付カウンターは、単に受付をするだけの場所ではありません。
患者さんが医療施設に入って最初に訪れる場所がここです。来院時に抱えていた不安や緊張が安心に変わるか、それとも増してしまうかを左右する大切な場です。
忙しさに追われて下を向いたまま事務的に対応してしまえば、どんなに立派な設備を整えても施設の印象は冷たいものになります。逆に、あたたかく迎え入れる場として設計されていれば、患者さんは言葉にしなくても「大切に扱われている」と感じ、その安心感がそのまま治療への信頼につながっていきます。
そして受付カウンターは、患者さんのためだけの場所ではありません。受付スタッフが一日の大半を過ごす「働く場」でもあります。スタッフ同士のコミュニケーションがとれやすく、必要な時にすぐ動ける動線が確保されていてこそ、患者さんへの気配りにも余裕が生まれます。
患者さんと医療施設、双方の関係性をつくり、さらに仕事の効率化も左右する医療施設の中でも最も大切な司令塔が受付カウンターなのです。
カウンターの設計・デザインのポイント
では、受付カウンターの設計ポイントはどんなところにあるでしょう。
下記に10個のポイントを挙げます。
患者さんに優しいカウンターのつくり方
これから新しく医療施設を造ったり、改装したりする場合のアドバイスは、カウンターひとつでも建築士に任せきりにせず、患者さんの動き、スタッフの動きを検証しながら出された図面通りでよいのか、チェックしてみる事です。
医療施設それぞれに患者さんの年齢層や性別、疾患の傾向などあり、特性で変える必要があるものの、建築士がそこまで配慮が至らない場合があるので、本当にそれでよいかをチェックすることが大事です。
大きな施設なら、本物と同じサイズのモックアップを造るとよいでしょう。全部でなくてもカウンターの1m程度を造ってみると使いやすいか、問題点が無いかがよくわかります。そこまでコストが掛けられない場合でも、高さが何センチなのか、奥行きは・・・というように実際の寸法を体験してみることが大切です。
意外と見落とされがちなのが、カウンター内部の設計です。コンセントの位置や数(最近は多めに作ることが必要です)、配線ケーブルの納め方、パソコンの画面と患者さんの目線と大きく顔を動かさなくて済む位置関係や、スタッフが仕事しやすい作業台の奥行き・・・など、内部の設計いかんで仕事の効率も随分変わります。
また受付スタッフを検討会に参加させることで自分たちがより良いカウンターを造るのに貢献したという意識を持ってもらうのも大切なポイントです。
今日からできるカウンターのバージョンアップ
最後に、今日からできるカウンターがバージョンアップする工夫をお伝えします。
最後に提案ですが、「この受付で患者さんにどのような気持ちになって欲しいか」をスタッフ全員で話し合ってみる事が大事です。ハード(設備)が変えられなくても、ソフト(意識と所作)は今日から変えられる立派なおもてなしです。
おもてなしのカウンター事例

(鈴木慶やすらぎクリニック)

(麻布台ヒルズクリニック)

(フラワー薬局)

ナイチンゲールに憧れ「将来の夢は看護師さん」と小学校の卒業文集に書く。慶應義塾大学病院の看護師として勤務するなかで環境デザインの力を確信し、建築士に転身。二級建築士を取得後、35歳でイタリア・ミラノの建築大学に留学、世界的巨匠パオロ・ナーバ氏に師事。イタリア政府認定デザイナーを取得し帰国後、一級建築士取得。株式会社ドムスデザイン設立。「リゾートしながら人間ドック」をコンセプトにデザインした黒沢病院附属ヘルスパーククリニックをはじめ、100を超える病院・クリニック・高齢者施設の設計・改修を手がける。来院患者数3倍、自由診療売上増など、経営に直結する成果を生み出し続けている。
【著書】 『医療の場を整える環境デザイン』 日本看護協会出版会 他
