2026-10-02

第1回 JA岐阜厚生連・飛騨医療センター 久美愛厚生病院 院長 山本昌幸氏

院長の山本昌幸氏

急性期から回復期・慢性期医療、在宅、予防医療までをシームレスに提供
施設環境の改善や広報誌の充実にも注力

岐阜県北部、飛騨地方の中心に位置する高山市は江戸時代の城下町の面影を残す「古い町並み」が国際的にも有名な観光地だ。市の中心部に位置するJA岐阜厚生連 ・飛騨医療センター・久美愛厚生病院は地域の基幹病院として急性期医療から回復期・慢性期、在宅医療、予防医療までをシームレスに提供している。院長の山本昌幸氏に現在の経営方針や、これからの病院の方向性などについて聞いた。
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(聞き手:千田敏之=医療ジャーナリスト)

「久しく美しく愛される」よう「久美愛病院」という病院名に

──こちらはとても歴史の古い病院とうかがっています。まず、病院の沿革からお願いします。
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山本 1935年(昭和10年)、肺結核の蔓延などで病に倒れる働き手が多く、地域社会の課題となっていました。この地域の産業組合だった大野郡産業組合は組合員を病苦から救おうと病院建設を決議、開設までは困難の連続でしたが1939年、ようやく開院することができました。その時、組合(くみあい)立の病院だったことから、「久しく美しく愛される」よう「久美愛病院」と名付けられました。

JA岐阜厚生連・飛騨医療センター 久美愛厚生病院(285床、17診療科)


戦後の1948年に岐阜県厚生農業協同組合連合会(JA岐阜厚生連)に経営が移管され、以降80年近く地域の中核病院としての役割を果たしてきました。2005年には「久美愛病院」から「久美愛厚生病院」に名称変更、2012年には現在の地、高山市中切町に新築移転し、現在に至っています。2019年には飛騨圏域の中核医療機関としての役割を明確に示すため、「久美愛厚生病院」から「飛騨医療センター 久美愛厚生病院」に名称を変更しています。

広大な面積の高山市、「地域包括ケアシステム」の視点を常に持って病院運営

──貴病院が提供している医療の特徴をお願いします。
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山本 高山市は広大で東京都とほぼ同じ面積を持っています。高山市が属する2次医療圏、飛騨医療圏はさらにその2倍の広さです。大都市から遠く離れ、地理的にも山に囲まれて独立した地域であることから、住民の方々の医療へのアクセスには制約があります。そのため、当院ではPET-CTなどの先端医療機器を活用した急性期医療から、回復期・慢性期医療、在宅医療、さらには検診をはじめとする予防医療までを、シームレスに提供することを心がけています。稼働病床数は全部で285床、内訳は一般病床144床、地域包括ケア病床49床、療養病床57床、緩和ケア病床23床、結核病床8床、感染症病床4床となっています。

── 医療圏が広大ということは、介護サービスとの連携も重要になってきますね。
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山本 医療だけではなく介護サービスへのアクセスにも制約があることから、治療を終えた患者様がスムーズに住み慣れた地域やご自宅に戻れるよう、「地域包括ケアシステム」の視点を常に持って病院の運営を行っています。当院単独で全てを完結させるのではなく、地域の医療機関、介護施設、行政などが互いに役割を分担し、地域全体で支え合う体制作りが不可欠だと考えるからです。当院は「地域包括ケアシステム」を支える中心的な機関として、時代の変化や地域のニーズに即しながら、「予防から治療、在宅まで」を包括的に提供できる存在であり続けたいと思っています。

──介護事業者とはどんな連携をとっておられますか。
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山本 当院から退院される患者様が地域の介護施設や在宅へとスムーズに移行できるよう、病院側からの一方的な指示に終始するのではなく、介護現場の皆様と平素から「顔の見える関係」をつくり、同じ目線で患者様、利用者様を支える姿勢を大切にしています。今、限られた医療・介護人材をいかに効率的かつ持続可能に活用していくかが大きな課題となっています。連携をより緊密に行いながら、地域全体で医療・介護体制を維持していけるようにしたいと考えています。

検診事業などの予防医療に力を入れることで経営基盤を強化‍

──病院経営面で心がけていること、工夫されていることは?
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山本 診療報酬は経営に直結するため注視することは必要ですが、目まぐるしく変わる改定内容に振り回されるべきではないと考えています。重要なのは、飛騨地域の将来的な人口動態、疾病構造、医療・介護人材の予測を踏まえ、「この地域に本当に必要な医療機能は何か」を常に考え続けることだと思います。そうした大前提の下、診療報酬において取得可能な上位の施設基準等を満たしていくという、「質の向上と適正な対価の確保」を基本路線としています。


併せて、検診事業など予防医療に力を入れることで経営基盤の強化も図っています。現在、飛騨圏域の高山市、飛騨市、下呂市、白川村のがん検診、特定健康診査、事業所健診、人間ドックを広く受託しており、医業収入に占める検診事業の比率は約7%で、大きな柱となっています。

経費面では、医療材料や薬剤費の高騰が深刻な問題ですが、県内に6病院あるJA岐阜厚生連の病院間での情報共有や、薬剤の共同購入といったスケールメリットを最大限に活用しています。また、近隣病院とも、競合するだけではなく、共通の課題に対して情報交換をしながら、地域全体の医療コストを適正化して取り組んでいくように進めているところです。

──設備面での取り組みはいかがでしょう。

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‍山本 病院内の照明のLEDへの更新を行い、その他の取り組みも含めて施設全体の電力消費量が約10%削減されるという成果も表れています。このケースでは、自己資金で設備面の改良を行うだけでなく、リース等の外部スキームや専門業者のノウハウを上手く活用することで、初期投資を抑えつつ迅速に省エネ化を進めることができました。

──医師、看護師をはじめとする医療スタッフの確保についてはどんな対策を取っておられますか。
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山本 医師については、大学医局との信頼関係を深め、安定した派遣体制を維持することを第一としています。研修医の方々には、急性期医療から在宅医療、予防医療まで地域包括ケアを研修できる日本でも数少ない病院という点をアピールしています。

看護師ら若い世代の医療従事者の確保については、地域医療を担う人材を「育て、長く活躍してもらう」環境づくりを目指して、魅力的な労働環境を整えたり、キャリア形成の道筋を作るなどの取り組みを行っています。

なお、医師や医療スタッフについては、当院への就職を検討するため見学を希望する人には、宿泊と交通費を補助する制度もあります。「飛騨高山の観光がてら見に来て下さい」ということで、本州は2万円、本州以外は3万円まで当院が負担しています。

地域医療構想には飛騨地域全体として持続可能な医療体制をどのように構築すべきかという視点で対応

──「新たな地域医療構想」のガイドラインも公表され、地域医療構想の議論がこの地域でも本格化すると思います。新たに創設される「医療機関機能報告制度」なども含め、貴病院の今後の対応、方向性は?
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山本 当院は、地域医療構想調整会議などの場を通じて、他の医療機関や関係者の方々と誠実に協議を重ねていく考えです。決して自院の都合や意向のみを優先するのではなく、飛騨地域全体として持続可能な医療体制をどのように構築すべきかという広い視点を持って対応していきたいと思います。「医療機関機能報告制度」の中では、当院は「高齢者救急・地域急性期機能」が対応すると考えられますが、そうしたことも含め今後詰めていきたいと考えています。

加えてもう1点重要な視点としては、国際的な観光都市の医療インフラとしての役割をどう果たしていくかということです。市の集計では、高山市の2025年の外国人宿泊者数は前年比 27.1%増の約98万人でした。これだけの外国人観光客が訪れる都市なので、外国人対応も充実させつつ、相応の急性期医療を提供できる医療機関として機能させて行きたいと思います。

施設環境改善の一環で外来の待合スペースに地元クリエーターの作品を展示

──施設環境の改善に向けてはどんな取り組みを行っていますか?
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山本 2012年の新築移転から15年目に入りますが、今でも来院された方から「正面玄関を入ると明るく、清潔感がある」と言っていただくことがあり、職員の励みになっています。

施設環境、療養環境の改善の一環として、今春には「CARE ART PROJECT」と銘打って、外来の待合スペースに地元クリエーターの作品を展示しました。医療機関にアートを取り入れる試みは、患者様やご家族にホスピタリティを可視化できただけではなく、地域文化と病院が融合した新しい表情を生み出す素晴らしい機会となりました。職員にとっても気持ちよく働ける職場環境づくりにつながったと思います。前回の課題を踏まえながら、次回開催を計画中です。

広報誌「澄瞳日和」が「病院広報アワード 2026」広報担当部門で優秀賞受賞

──貴病院の広報誌「澄瞳日和」を読ませていただいたのですが、とても読みやすく、患者さんをはじめとする地域住民の方々とのコミュニケーションを非常に大事にされている印象でした。

広報誌「澄瞳日和」
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山本 広報誌「澄瞳日和(すみひとみびより)」は、2025年1月からタイトルも含め大幅にリニューアルし、年4回発行しています。「澄瞳日和」という誌名は、当院の理念である「澄んだ瞳で観察し、温かい心で理解する」から取りました。患者様や地域の皆様に寄り添い、健康と安心をともに作っていきたいという思いを込めました。

職員で構成された編集委員会が中心となって編集、地元のデザイナーさんなどの協力を得て制作しています。病院からのお知らせや、新任医師や新しい医療機器の紹介、健康教室の告知など、内容的にはごく一般的な広報誌なのですが、今年7月、医療・介護の総合情報サイト「CBnews」(株式会社CBヘルスケア)主催の「病院広報アワード 2026」広報担当部門(広報誌)において優秀賞を受賞しました。「専門的な医療情報を地域住民に向けて親しみやすく分かりやすく伝えている」として、「病院のメッセージが伝わる広報誌」と評価されたのです。

こうした広報の取り組みが、地域住民とのコミュニケーションだけではなく、職員の獲得や定着にもつながっていくことを期待しています。


(2026年8月27日収録)

千田 敏之
(
せんだとしゆき
)
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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