2026-10-13

第9回 2026年診療報酬改定で新設された外科医関連加算の意味を考える(前編)

病院の機能再編・集約化を加速する「地域医療体制確保加算2」と「外科医療確保特別加算」

今回は2026年診療報酬改定で新設された外科医関連の報酬のうち、地域の医療機関の機能再編・集約化を加速すると考えられる項目について考えてみます。

「新たな地域医療構想」を見据えて地域の医療機関の機能再編・集約化を進めるための診療報酬としては、本連載(PIVOT医療経営)の「第2回『新たな地域医療構想』を先取りする 2026年度改定」でも解説した、急性期拠点機能を想定した「急性期病院A一般入院料」、「急性期病院B一般入院料」が典型的なものと言えます。しかし、実際に新報酬がスタートしてみると、入院料以外にも医師や医療機器の集約化をじわりじわりと進める仕組みがいくつか盛り込まれていて、今回、厚生労働省がいかに知恵を絞ったかがわかります。

9月12日にさいたま市で開かれた第67回全日本病院学会での特別発言で、厚生労働省医政局長の佐々木 昌弘氏は地域医療構想と診療報酬をリンクさせることについて、「厚生労働省は本気」と話しました。その本気度の表れの1つが、新設された外科医関連の報酬、「地域医療体制確保加算2」と「外科医療確保特別加算」と言えるでしょう。

どちらも地域の基幹病院などにおいて外科医をはじめとする医師確保を含めた体制整備のために新設された点数で、日本消化器外科学会など外科系学会が中心となって20年近く前から国に働きかけ、やっと実現しました。最近になってその取得状況が明らかになってきましたが、新点数を歓迎する声がある一方で、地域の医療機関における一般外科手術への影響が懸念され始めています。

「当該手術年間200例以上実施」「加算を算定する診療科で経験5年以上の常勤医を6人以上配置」などが要件、加算額の30%以上を当該診療科の医師に支給

「地域医療体制確保加算2」(720点)は入院料への加算で、若手医師が減少する外科系診療科(消化器外科、心臓血管外科、小児外科、循環器内科)の医師の勤務環境改善と処遇向上を評価する点数です。そして、「外科医療確保特別加算」は「地域医療体制確保加算2」の届出施設を対象に、胸部(食道)から腹部(胃、腸、肝胆膵)にかけての鏡視下手術を中心に、長時間かつ高難度な手術料への加算(手術料の15%)です。

対象として主に消化器外科領域の長時間かつ高難度手術が約150種類指定されており、「当該手術を年間200例以上実施」「加算を算定する診療科で経験5年以上の常勤医を6人以上配置」などが要件になっています。そして、「当該手術の所定点数の100分の15を加算、当該診療科の医師が行った対象手術件数に応じ、休日手当、時間外手当、深夜手当、当直手当等とは別に、当該加算額の100分の30以上に相当する額を総額とする手当を当該診療科の医師に支給、当該支給額の8割以上を当該診療科に配置されている常勤医師に支給」することも定められています。

つまり、該当する手術を行うたびに医師個人に手当が出来高で還元されるわけで、これまでになかった画期的な仕組みの診療報酬なのです。なおこれらは、いずれも「急性期総合体制加算」または「特定機能病院入院基本料」届出が要件となっており、「急性期拠点機能」の病院の医師確保を想定した加算です。

全国自治体病院協議会調査、「外科医療確保特別加算」は453病院中41病院が算定、17病院が算定予定

2026年9月3日、全国自治体病院協議会は記者会見を開き、「外科医療確保特別加算」と「地域医療体制確保加算2」に関するアンケート結果を報告しました。

アンケートの実施時期は2026年7月17日~8月24日で、対象は会員施設835病院、回答したのは453病院(回答率54%)でした。外科医療確保特別加算は、7月1日時点で、453病院のうち41病院が算定、17病院が今後算定予定と回答しました。

対象診療科の医師への支給率は30%が最も多く、4分の3の病院が30~40%に設定していました。同加算を算定できない施設に「満たせない施設基準」を確認したところ、「長時間かつ高難度な手術を合わせて年間200例以上実施」や「他の医療機関との連携体制」が挙がりました。

同加算取得の前提条件となる「地域医療体制確保加算2」は、7月1日時点で52病院が算定、21病院が算定予定でした。病院の経営形態は、地方公営企業法の「全部適用」が41病院、「一部適用」が6病院、地方独立行政法人が22病院、その他が4病院でした。地方公営企業法の「一部適用」の病院の場合、特殊勤務手当の新設や変更のためには自治体の議会を通し、条例改正の手続きを踏む必要がありますが、7月1日時点で6病院が算定していました。なお、同加算を算定できない病院に満たせない施設基準を尋ねたところ、「交代勤務制またはチーム制を導入していること」が多かったとのことです。

消化器外科学会調査、「地域医療体制確保加算2」「外科医療確保特別加算」の対象施設のうち、「外科医加算」を申請済み・準備中は73.0%

その1カ月前の8月には日本消化器外科学会が、会員施設に「地域医療体制確保加算2」と「外科医療確保特別加算」の取得状況(6月時点)を調査した結果を公表しています。対象は922施設(初回送付人数 1,002人)で、回答したのは368施設でした。回答施設は公立・公的病院(29.2%)と地域中核病院(26.4%)が過半数を占め、大学病院本院も18.9%を占めました。常勤消化器外科医6名以上の回答は75.2%でした。

アンケートの結果は、「両方の加算の対象となり得る」との回答は184件(47.5%)、「少なくとも一方の対象となり得る」との回答は230件(59.4%)でした。

「少なくとも一方の対象となり得る」と回答した230施設のうち、「地域医療体制確保加算2」を算定中・申請済み・準備中は85.7%、「外科医療確保特別加算」は同73.0%に上りました。「外科医療確保特別加算」の外科医への配分割合について、具体的な回答は151件(65.7%)あり、30%が57件(24.8%)で最多、50%が30件(13.0%)、50%以上の配分予定の回答も58件(25.2%)ありました。

「地域・中小規模病院が制度の対象外となることへの懸念」も指摘

アンケートでは、算定施設への患者・手術・人員の集約化についても聞いていますが、「ある程度進めるべきだが、地域医療維持の観点から慎重な対応が必要」が全387回答中264件(68.2%)で最多でした。「積極的に進めるべき」と合わせると、319件(82.4%)が一定程度の集約化を支持していました。

一方で、アンケートではこれらの加算を算定できない施設の声も拾っています。「地域医療体制確保加算2」の対象外・判断不能・制度未把握の157件では、「特定機能病院または急性期総合体制加算の届出なし」81件(51.6%)、「外科医数不足」67件(42.7%)、「チーム制・交代勤務制の構築困難」58件(36.9%)が主要な理由でした。

同じ157件について「外科医療確保特別加算」の対象外の理由を聞いたところ、「高難度・長時間手術が年間200例未満」が98件(62.4%)と最多で、「関連届出なし」70件(44.6%)、「外科医数不足」67件(42.7%)、「チーム制・交代勤務制・勤務間インターバル制の構築困難」50件(31.8%)が続きました。

アンケート結果について日本消化器外科学会は今回の加算新設が「外科医への直接的な処遇改善」、「外科医の負担・専門性の公的評価」などにプラスになったとしつつも、「年間200例基準、外科医数、関連届出、勤務体制などにより、地域・中小規模病院が制度の対象外となることへの懸念が強く示された」と指摘、「高難度予定手術の集約化を進める一方、緊急手術・急性腹症・一般外科診療を担う地域施設の機能を維持する、選択的かつ段階的な体制設計が求められる」と今後の課題も指摘しています。

要件を変更するだけで今回の該当診療科、対象手術以外にも適用させることが可能

日経メディカル等の報道によれば、全国自治体病院協議会のアンケート結果を報告した会長の望月 泉氏は、「外科医療確保特別加算」について「診療科偏在の是正というよりも、病院の集約化を狙っているのではないかと思っている(中略)。(対象診療科の)医師数が4~5人の病院では医師をあと1~2人異動させれば加算できるので、来年度に向けて、集約化の動きが起きてくるのではないかと予想している」と今後の動きを不安視する発言をしています。

外科医不足を背景に、厚生労働省(と中央社会医療協議会)が絶妙に設計した「地域医療体制確保加算2」と「外科医療確保特別加算」は、その要件を変更するだけで今回の該当診療科、対象手術以外にも適用させることが可能です。その意味では、機能再編・集約化に向けての“最終兵器”と言えるかもしれません。(この項続く)

千田 敏之
(
せんだとしゆき
)
医療ジャーナリスト

愛知県生まれ、日経BP社にて日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション等、医療媒体の編集長を歴任。2020年に独立、医療ジャーナリストとして活動。

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